~訪問診療との出逢いから現在まで~
患者さん第一号
大学からの派遣医として、青森県下北郡 脇野沢村に勤務していた頃の話です。
当時は、まだ訪問診療という言葉もシステムも無い時代でした。もう25年も前の事です。
ある日、保健婦さんから1本の電話が入ります。
『どうしても通えない患者さんがいるのですが、診にきてもらえませんか?』
そこは、交通の便が悪く、車ではなかなか行けない場所。船で行くしかないような場所だったんです。
『患者さんが困っているなら、行かなきゃ!』
訪問診療について、まだ何の知識もないままに気持ちだけで赴いたんですね。
今思えば、よく行ったもんだと思うわけですが、治療後に、心から感謝の言葉を頂いたんです。
『ありがとう! おかげで痛みがなくなりました。 ありがとう。』
初めて行った訪問診療で。 心から嬉しいと感じた瞬間でした。
決意
当時自分はまだ、26才位でした。治療はもとより何もかもがこれからの、言わば新人歯科医師です。
当時、脇野沢村の老人率はすでに20%を超えていました。
今でこそ当たり前の数字ではありますが、25年前という事を考えると劇的に高い数字です。
もしかしたら、困っている方々が、もっといるんじゃないか!?
その頃たまたまテレビで、ドイツの歯科医が往診してる番組を目にしたんです。
時は24年前。日本の保険診療システムには訪問や介護もなかった時代です。
スイッチ
『あ、こういう患者さんって結構いて困っているけど、どうにもならないって諦めてるのかな?』
なにか、歯科医師として、スイッチが入った瞬間でした。
自分の中でガツンと入った【スイッチ】は、もう止めることは出来ませんでした。
自分がやらなければ、困っている感患者さんは誰が救えるのか?
自分がやって、患者さんの喜ぶ顔が見たい!
自分の中で、歯科医師としての使命は訪問診療のシステム構築だ!と突き進みました。
各学会(公衆衛生学会)での発表を繰り返し、訪問診療の重要性を訴え続けました。
すると、行政が賛同し動き始め、保健婦さんが興味を持ちはじめたんです。
一人のスイッチが、周りにも感染したんです。
誤嚥
誤嚥についてクローズアップされ、歯科の訪問診療についても世間の関心が向いてきました。
当院では、18年前から誤嚥対策としてお口の体操を取り入れ活動してきました。
当時はまだ、誤嚥予防のマニュアル等がなく、アメリカのリハビリ雑誌に掲載されていたものをベースに医院独自にカスタマイズして実施してまいりました。
自作
話は戻りますが。。。
現在でこそ往診用として、専用のユニットが販売されておりますが、
当時はそんなものは、当たり前に無いわけで・・・
しょうがないので、自作しちゃいました!!(笑)
ご自宅や施設で行う歯科治療って、器材が意外と多いんです。
歯を削る・唾液を吸う・歯をクリーニングする・抜く・等々
院内で行う治療を同等に行う為には、そのレベルの器材が必要なわけで。
想い
自分が、歯科医師として常に思う事。
というより、思う前に染み付いている事。
患者さんの声を大事にしたい!!
これに尽きます。
訪問診療のみならず、当院と関わる患者さんに対して常に、自分が貴方だったら? と考えて治療を行っております。
結
『訪問診療物語』を最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
25年前から、試行錯誤しながら積み上げてきたものが形になり、
患者さんのお役に立てていることを嬉しく思います。
これからもスタッフ一同、日々研鑽してまいりますのでどうぞ、宜しくお願いします。
あこう歯科医院 院長 赤穂 和広